大判例

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東京高等裁判所 昭和43年(ネ)1117号 判決

そこで就業規則第九一条第六号の「休職期間を満了しても復職出来なかつたとき」というのはいかなる場合をいうのかが問題となるが、当裁判所は右の「休職期間を満了しても復職出来なかつたとき」というのは休職期間が満了しても休職の事由となつた障害が消滅しなかつた場合をいうものと解する。けだし休職を命ずるということは従業員に職務に従事させることが不能であるかもしくは適当でない事由が生じた場合に、従業員の地位を保有させながら勤務のみを禁ずるものであるから、その事由の消滅によつて当然復職すべきことが予定されているものというべく、また休職を命ずる場合に定められる休職期間も一応の休職の最大限度を定めるものにほかならないから、休職期間の満了前に休職の事由となつた障害が消滅したときは性質上休職は当然終了し復職せしむべきものであり(この場合における復職の発令は確認的なものというべきである)、他方休職期間が満了しても休職の事由となつた障害が消滅しない場合に休職期間が満了したとの一事を以て当然復職するという考え方は人事院規則一一―四第六条第二項のような定めがある場合は格別、就業規則第九一条第六号のような定めがある場合には採りえないところであり、むしろ就業規則第九一条第六号は右のような休職期間が満了してもなお休職の事由となつた障害が消滅しない場合を考えて、そのようなときは従業員を解雇することができる旨定めたものと解すべきだからである。ところで前記引用にかかる原判決の認定によれば、被控訴人は休職期間満了前控訴会社から徒歩約一分の至近距離に居住していた知人の宮重定子に休職期間が満了する日の翌日である昭和四一年七月一六日以降毎日午前七時三〇分から午後五時頃まで被控訴人の子供を同女宅で預りその世話をしてもらうことを依頼してその承諾をえ、かつ午前と午後の各三〇分ずつの授乳時間に被控訴人が同女方に赴くか、あるいは同女が子供を控訴会社の門前附近まで抱いてくるかいずれかの方法によることを決めていたというのであるから、被控訴人の休職の事由となつた幼児を保育する必要上正常の勤務に服することができないという障害は休職期間の満了と同時に消滅したものというべきであり、そうだとすれば被控訴人の休職は休職期間の満了と同時に当然終了し、控訴会社は被控訴人を復職せしむべきものであつたといわなければならない。しかも前記引用にかかる原判決の認定によれば、被控訴人は休職期間の満了する以前の同年七月一四日夫一正を通じ控訴会社の庄司勤労課長に対して子供を預つてくれる人が見つかつたので同月一六日から出勤したい旨申出て、作業表と通勤証明書の交付を求めたところ、同課長は右一正に対し被控訴人が右一六日に出勤すればその時これらのものを交付する旨答えたというのであつて、被控訴人は休職期間の満了と同時に休職の事由となつた障害が消滅すべきことを控訴会社に対して明かにし、控訴会社もそのことを確認したわけであるから、控訴会社としてはいよいよ以て休職期間の満了と同時に被控訴人を復職せしむべきものであつたといわなければならない。しかして就業規則第九一条第六号の解釈上復職せしむべき場合に復職させないで解雇することが許されないことは明かであるから、結局被控訴人は同条同号に該当しないものというべきであつて、これに該当するものとしてなされた本件解雇の意思表示は無効であるといわなければならない。

(浅賀 岡本 鈴木)

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